2023.05.10

「鎧」を脱ぎ「丸裸」で挑む呉服産業で起業。和のカルチャーを世界に広げる挑戦。

「鎧」を脱ぎ「丸裸」で挑む呉服産業で起業。和のカルチャーを世界に広げる挑戦。

「着物を身近に思ってもらえるように」というコンセプトのもと、今月一つの着物専門店が始まった。創業者の刑部優美帆(おさかべゆみほ)さんは「着物にはパワーがある」と語る。東京オリンピックを巻き込んだKIMONOプロジェクトへの参加、ワークショップなどの各種着物イベントの企画運営、そして個人店の創業。彼女をそこまで魅せる着物パワーとは一体何なのだろうか。

刑部優美帆さんのプロフィール

高校卒業後、自動車関係の工場に7年勤めた後、外国人の方が営むバーで働く。その後、着物に興味を持ち、浜松の呉服屋に1年、福岡の呉服屋に6年勤めた。福岡にいた際には、「KIMONOプロジェクト」を展開するイマジンワンワールドに参加した。

その後、地元湖西市に戻り、「着物を身近に」をコンセプトに自分の着物専門店「ななほう」を立ち上げる。現在、ななほうでは丁寧なカウンセリングの後、一人ひとりの顧客の要望に沿った着物の仕入れ・販売だけでなく、実際に着物に触れる機会を増やすため、多様なイベント、着付け教室なども展開している。

自分らしさの模索と出会い

自動車関係の工場と掛け持ちでバイトを始めた理由は海外について知れると思ったから。外国語の習得、そこから広がる自分の世界に期待して務めることにしたトルコ人オーナーが営むバー。しかしそこで見つけた自分らしさの在処は意外にも「和文化による交流」だった。

日本人である自分よりも日本のことに詳しい外国人との出会いが起点となり通い始めた着付け教室。周囲の人々に着付けると、とても喜んでくれ、その時の「着物でこんなにも喜んでくれるのか。」という感動がその後の原動力となったそうだ。

インクジェットと共通言語

はじめは浜松の呉服屋に就職したが、そこではインクジェットでプリントされた着物が職人の手で作られたものとして販売されていた。そこは1年で退職し、福岡県久留米市の呉服屋に転職した。そこのオーナー発案の「KIMONOプロジェクト」に参加する。

「KIMONOプロジェクト」では東京2020オリンピックに寄せて、参加する213カ国モチーフの着物を一つ一つ職人の手で制作する。それぞれの着物に各国の文化、背景、素敵なところを映し出すのだ。

そこで刑部さんは「着物のパワー」を強く感じたという。言語関係なく、着物に映し出された国と国がともに並ぶその様子は、言葉を介さない「世界の皆様へのおもてなし」であると同時に、国内外の人々を喜ばせるものであった。

KIMONOプロジェクトが一区切りついた後、刑部さんは地元に帰って着物による和文化交流の輪を広げる活動を始めた。

「鎧」を脱ぎ「丸裸」で挑む創業

きっと、刑部さんの人間的魅力と百貨店でのワークショップなどの地道な活動の積み重ねが周囲の人の心を動かしたのだろう。いつしか、刑部さん自身の着物店を応援してくれる人が増えて、歴史ある着物業界での創業、という挑戦を刑部さんは決意した。

「鎧なしに丸裸で挑む。」こう、刑部さんは創業の大変さを表現した。ブランドという鎧がないことはすなわち様々な意見にさらされることを意味する。「自分で始めるなんて夢見て上手くいかないよ。」「着物なんてみんな着ないのによくやろうと思うね。」「趣味の延長でしょ。」そんな孤独な戦いを支えたのはhuntercityでのコミュニティだったそうだ。

湖西市で”着物を身近に感じられる場”をテーマにした店舗をオープン

同じ熱量の刺激、「自分理念」の再構成

huntercityには創業してから1年ほど経った頃参加したそうだ。5日間同業者で集まり密度の濃い活動をする進撃WEEKでは、普段とは異なる刺激を受けた。また交流会にて業種は違えど同じ思いで、ものすごい熱量で活動している仲間の姿は活力になったという。

「自分理念」の重要性を理解し、自分の理念を再確認できたのもhuntercityだったそうだ。それまでは「着物は良い」というなんとなくの思いでずっと突っ走っていた。しかし、具体的に「なぜ着物なのか」を言葉にしようとすると、なかなか自分の中に落とし込めず、言葉をとっかえひっかえするのを繰り返していた。それが、様々な人との交流を経て、自分が目指してたことはこういうことだったんだな、と再認識、具現化することができた。

「着物人」から世界に届ける日本の本質

まずは地元に根付いて着物の文化で喜ぶ方を一人でも多く増やし、着物のことを知っているだけではなく、自分で着れる、日本文化を知っているそんな日本男児・大和撫子、いわば「着物人」を増やしていきたい、と今後について語ってくれた。そして、その環を地元に限らず大きく広げ、ゆくゆくは現代のハイテクな世の中でこそ「着物パワー」を通じて世界に日本の考え方や本質を届けるような案内ができることを目指しているそう。

未来の同志へ

最後に今起業しよう、hackjpnが運営するHUNTERCITYに入ろうと思っている人たちへエールを送ってくださった。

「hackjpnのメンバーはみんなとても温かいです。起業すると心細いときがたくさんあると思いますが、その時自分の気持ちを整えてまた挑むエネルギーを貰えます。様々なことを学べる嬉しさとそれ以上に素敵な人が集まってくるので、ぜひ自分の夢、目標を叶えるために、みなさんとも切磋琢磨して一緒に交流したいと思っています。

自分は和文化のことしかわからないが、色々な分野で確固たる「自分理念」を持った人が集まる場でもあります。その人達の活動を見てるだけでも、とても勉強になるし、1年半前自分もさまよっていたり、不安でした。そういうふうに当てはまる人がいたら進撃やHUNTERCITYに入って、是非一緒に目標に向けて走り抜けたいです。」

取材動画

文章構成:佐々木愛子

聞き手:戸村光・佐々木愛子