2024.02.13

AIで「働くをゲーム化する」社会へ

AIで「働くをゲーム化する」社会へ

昨年末、ChatGPTを活用した経営戦略のバイブルを出版し、経営者界隈で注目を浴びる松山将三郎氏。物語形式で綴る本書は、ChatGPTの具体的な操作方法はもちろん、組織運営における様々なメソッドをわかりやすく紹介している。経営者をはじめ、ChatGPTをこれから学びたい人など幅広い層が楽しめる一冊だ。

今回は、『株式会社サンクスUP!』CEO 開発者 兼 一般社団法人中小企業リスキリング協会代表理事の松山将三郎氏に、これまでの道のりを伺った。

叶わぬ夢が拓いた新たな可能性

岡山県で生まれ育った松山氏は、幼少期からアニメやゲームが好きな少年であった。20歳の頃、漫画家を目指し自作の漫画を大手出版会社に持ち込むも「絵が下手」という理由で落選。

”絵が下手だから”

漫画家として、あまりにも致命的な理由で落選してしまったことに大きなショックを受け、その日から猛特訓の日々が始まった。

ある日、模様や柄に使用するスクリーントーンを削る作業中のことであった。

「俺、こんなのしたくねえな。パソコンでなんとかできんじゃないか?」

スクリーントーン
スクリーントーン

そう思い立ち、PhotoshopとIllustratorを学び始めた。気づけば時間を忘れるほど無我夢中になってパソコンと向き合っている自分がいた。

今でこそCanvaをはじめ誰でも簡単にデザインを作ることができる時代になったが、2000年頃といえばIllustratorやPhotoshopを使いこなせるのは、それらを生業としたプロのみであった。プロレベルまでスキルを磨き上げた松山氏は、当時周りから大変重宝された。

結果、漫画家の夢を諦めることとなってしまったが、それと引き換えにプロレベルのパソコン操作技術を習得した松山氏は、地元のシステム会社に入社。しかし不況の波に襲われ一年半後にリストラに遭う。

その後、再就職するものの上司と馬が合わず、しまいには評価0をくだされ再び会社を離れることになった。

こうして2度のリストラを経験した松山氏は、起業することを決意する。

全国の経営者の注目を集めた独自の評価プログラム

起業を決意し、運送倉庫のシステム制作の事業を始めた。

社長として今度は自分が人事評価する立場となり、前職のトラウマが蘇る。

「人間が人間評価するって変な話だなと思ったんです。
自分の好きなゲームみたいに、楽しくできないかなって」

そこで自社向けにソーシャルゲームの理論を取り入れた評価プログラムを開発。

全国の経営者の集いでプログラムを紹介すると、思いもよらぬ大評判となり経営者からのオファーが殺到した。こうして自社向けの人事評価ではあったが、周りの後押しもあり本格的に事業展開することになる。


サンクスUP!型360度評価方式

共同で策定された評価基準に基づいて、全員が参加する方式。単なる評価ではなく「良いところ探しアンケート」を通じて結果を導く。これにより評価者の心理的負担が最小限に抑えられるだけではなく、上司は部下を積極的に応援する立場になる。

9×9のマス目に目標とアイデアを書き込む『マンダラチャート』を使って自分の目標を明確化


そして2021年、株式会社サンクスUPを設立。現在は岡山、東京、兵庫にオフィスを構えるまで急成長を遂げた。

松山氏の「失敗」と「好き」が社会に貢献した瞬間であった。

リスキリングへの挑戦

多くの企業からサービスの評価を貰う一方で「仕組みは素晴らしいが、現場の人には理解しにくい」と指摘をされるようになった。

ちょうどその頃、政府をはじめとする経済産業省がリスキリング政策を推進。リスキリングの制度が充実し補助金が設けられるようになる。

リスキリング(Reskilling)

新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること。近年では、特にデジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業につくためのスキル習得を指すことが増えている。

参考;経済産業省HP

両親が教師であることから元々教育にも興味あった松山氏にとって、リスキリングは自分が本当に求めていたものであると直感的に感じた。サービスの課題と自分の興味関心がマッチしていると感じたからだ。そして自社サービスをリスキリングで取り組むことを決意。

現在は、講師に留まらず一般社団法人中小企業リスキリング協会の代表理事も務め、中小企業を中心とするリスキリングをの普及活動に尽力している。

多様多種なリスキリング講座を開講

https://re-gi.jp

今後の夢

松山氏に今後の夢について語ってもらった。

「これから間違いなくAIによって働き方は変わってくると思うんですよね。私は、AIを推進する立場ではありますが、一方で危険性も感じています。適切な枠組みを作らなければ、価値観が壊れて「人間とは何か」ということが問われると思います。

私が作りたいAIの世界というのは『働くをゲーム化する』、すなわち今までの楽しいゲームの延長上としてAIを使うということですね。誰しもがゲームクリエイターになるし、漫画家になれば、小説家にもなる。遊びで世界がどんどん活発化していく。

『世界を神ゲに』これが私の夢であり、ミッションだと思っています。」

さまざまな試練を乗り越えた経験と猪突猛進に極め続ける情熱。「失敗」と「好き」の原動力をビジネスへと還元していくことは、誰にでも出来ることではないだろう。サンクスUP!社のサービスが一人でも多くの人が楽しく働ける社会になることを願う。

聞き手・文章構成:東沙紀