2024.02.21
サブスク。
今では当たり前のように私たちの日常に根付いたサブスクリプション(以下、サブスク)。音楽や映画にドラマ、近年では車や家具さえもサブスクで利用ができる。ここ数年の間に一気に普及したサービスかと思えば、実は私たちが気付かぬうちに昔から利用してきたサービスのひとつだ。電気代や水道代などのインフラ、新聞、雑誌の購買料・・・考えてみると、山ほどある。
今回は、サブスク分野で30年以上の経験を積み、現在はサブスクリプションサービスのプラットフォーム『株式会社 オフィサブ』を提供する上水流(かみずる)克昌氏にサブスクについて伺った。
プロフィール
兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、日本電信電話株式会社(現NTT)に入社。支社企画からマーケティング、人材育成など様々な部門を経て、32歳でITベンチャーに転職。48歳で退職し、金融系コンサルタントや商店街コンサル及びセミナー講師、イタリア直輸入のフレグランスの輸入販売など多岐にわたる業界に携わる。2023年「株式会社 オフィサブ」を設立。
実は中小企業にとって敷居の高いサブスク
サブスクの定義は以下の通りである。
サブスクリプション(subscription)とは、予約購読、購読料、会費、寄付(金)、出資(金)、応募、申込、加入、署名、承諾などの意味を持つ英単語。雑誌などの定期購読といった意味があり、ITの分野では会員制のサービスへの加入や、定額制のコンテンツ配信サービス、定期的に利用権を更新するソフトウェアの販売方式などを指すことが多い。
IT用語辞典 e-Wordsイーワーズ
つまり、定額で「所有」ではなく「利用」するサービスのことだ。
消費者にとって、サブスクは初期投資が少なく定額で比較的安価に利用できる。また好きな時に登録解約が可能な手軽さも挙げられる。一方、事業者の視点では一般的に一度顧客を獲得すれば安定的な収入が見込め、将来の見通しが立てやすく経営がしやすい。しかし、これはあくまでもMicrosoft365やZoomなど急成長を遂げるSaaS企業を中心とした一部の企業に過ぎない。中小企業は、まだまだ買い切り型のビジネスが主流である。その理由を上水流氏はこのように述べる。
「今まで、買い切り型のビジネスをやっていた中小企業にいきなりサブスクに切り替えてもらうのは、本当に難しいんです。だって、今まで100万円、1000万円の商品を売ってきた人たちが、いきなり1000円ぐらいのサービスを売るんだから。」
資金調達が容易にできる企業にとっては魅力的なサービスのサブスク。一方で中小企業にとってサブスクは、システム構築代に人件費・・・莫大な初期投資が必要となる。さらに利益がでるのは3年後、5年後。そもそも、サブスクの売り方もわからない。
「会社の体制から変えないといけないから、中小企業にとって本当にハードルが高いんです。だから、僕がサブスクが売れるためのプラットフォームを代行して作ってあげればいいんじゃないかって思ったんです!」
補助金を利用して、手軽にサブスクを。
中小企業にも手軽にサブスクリプションを提供できる環境を作りたい──
上水流氏のそんな願いから生まれたのが「オフィサブ」だ。オフィサブは様々な企業のサブスクサービスのプラットフォームで、これまでにない斬新なサービスだ。
「サブスクって実はファン作りなんですよね。いかにして継続して、このサービスを使ってもらえるか。継続して使ってもらえるようなサービスを作り上げていかないといけないんです。」
オフィサブは、単なるプラットフォーム提供だけでない。上水流氏がメンターとしてサブスクリプションのメソッドをチューニングし、売れる仕組みを教えてくれる。さらに初期投資へのコストの問題は、経済産業省が交付するリスキリング補助金でまかなう。これにより、これまで中小企業にとって敷居の高かったサブスクサービスが一気に手に取りやすいサービスとなるのだ。
熊本の地方から
現在、熊本県の某住宅メーカーで従業員140名全員に向けてのリスキリング研修及びサブスクのプラットフォーム構築のプログラムを進めている。
上水流氏の拘りは、社員の自主性を尊重し、強制的な受講を促さない点だ。中小企業において、強制的な研修は逆効果となる可能性があると危惧する。
”サービスを作成することがゴールではなく、全社員がサービスを愛し、育てていくことが最も重要である”と、上水流氏は強く言う。そのため研修内容は独自のメソッドを用いて個別に計画し、柔軟なアプローチを取っている。本事業は2年後に完成を目指す。
「人を愛する」ことを常に大切にする上水流氏。これまでも、そしてこれからも上水流氏のファンは増え続けていくだろう。地方から、そして全国の中小企業にサブスク文化が広まることを期待したい。
聞き手:戸村光
文章構成:東沙紀