2023.06.30

ケーキ市場での新たな形 伝統的な業界での戦い方とは

ケーキ市場での新たな形 伝統的な業界での戦い方とは

 至福のひとときを約束する。人生で一度は食べてみたいケーキ。これが、PremelCakeのフレーズである。Web限定販売のPremelCakeの人気に火が付いた裏には創業者である曽我氏の努力が隠れていた。

            

曽我大樹氏のプロフィール

プレメル株式会社 創業者。株式会社さだめ 代表取締役。

    PremelCakeの開発物語 ケーキ市場参入のきっかけとは

安いケーキの生クリームが苦手であり、コンビニで売っているようなケーキの生クリームは食べることができない。パティシエである田中かおり氏は生クリームに対してこうした不満を感じていた。このような不満を抱えていた田中かおり氏との出会いをきっかけに、田中氏との美味しい生クリームの開発に至ったと曽我氏は語る。

加えて、ケーキ市場を選んだのには戦略的な理由もあった。食品を全国で提供するには冷凍する必要があり、冷凍が可能なケーキは全国配送に適していた。そして、ミスターチーズケーキが既にWeb販売においてワンプロダクトでの食品市場を開拓していたことが曽我氏のワンプロダクトでのWeb販売の背中を押した。ミスターチーズケーキの事例を見ると、高単価であっても高品質のものであれば、Web販売のみであっても多くの消費者に購入してもらえることが分かっている市場であった為、ケーキ市場を選択するに至ったのである。

クレーム・ソワニエ 最高品質の生クリームの課題

     

上記の戦略とストーリーがあり、曽我氏は最高品質の生クリームを開発することを決意した。最高品質の生クリームを探し、たどり着いたのはクレーム・ソワニエという生クリームであった。理想の生クリームを見つけたが新たな課題が発生したのである。それは、最高品質の生クリームであるがゆえに、普通の生クリームと比べて三倍から四倍の価格であるということである。100%クレーム・ソワニエのみで生クリームを使おうとするとケーキの価格が高騰してしまう為、仕入れ先にやめたほうが良いと言われた。しかし、曽我氏は最高品質の生クリームという目標に向けて決して妥協をしなかった。曽我氏はWebのみの販売にすることで、販売店舗や販売員のコストを削減するという決断を下したのである。このようにして、曽我氏は自らの目標である最高品質の生クリームを求めて、妥協をすることなくクレーム・ソワニエ100%での生クリームを開発し、実現することに成功した。

    

100万本販売 セブンイレブンとコラボの秘話とは

事業が進んでいく中で、プレメル株式会社はある大きな機会を獲得した。それは、セブンイレブンとプレメル株式会社のコラボスイーツの販売が決定したことである。プレメル株式会社の監修したセブンイレブンのカッサータアイスバーは全国で100万本販売され、大きな成功を収めたのである。どのようにして、セブンイレブンとのコラボが実現したのだろうか。そこには曽我氏のチャンスを逃さないという情熱があった。

Web販売をしていた際にセブンイレブンの職員の方がプレメル株式会社のケーキを購入していたことを曽我氏は確認した。そこで、PremelCakeを購入したことを契機に逆営業をかけることによって、そこからセブンイレブンとのコラボの話が進み、最終的には実現したのである。こうした小さな繋がりですら、チャンスに変えていく曽我氏の姿勢がセブンイレブンとのコラボ、更にはカッサータアイスバーの100万本の売上に繋がったのである。

スイーツ市場の開拓余地 想定される未来とは

スイーツ市場の新たな形を開拓している曽我氏は、スイーツ市場にはまだ十分な開拓余地はあると考えている。しかし、ミスターチーズケーキのようなクリエイティブ力とオウンドメディアのSNSの力が両方備わっていないと販売の方法だけでは伸びることはできない。サブスクリプションモデルやライフタイムバリュー、一次顧客がいかにオーシャンサービスを中長期的に購入してくれるか。販売広告費に対する顧客の払ってくれる金額(費用対効果)。こうした数字の管理が新たなスイーツ市場の開拓には大切であると曽我氏は語る。これまでの飲食店はノンテックでありスタートアップではない。その為、こうした重要であるデータを取らずに運営をしてきた店が非常に多く、こうしたこれまでのやり方と最先端のところにこそ新規で参入するには入り込む余地があるのである。日本の伝統的な業界であっても角度の違う切り口からであれば、まだ開拓する余地はあるのではないか。

取材動画

文章構成:玉上寛太

聞き手:戸村光